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 山 路 の 露  〜やまじのつゆ〜 


■作者・成立時期■


不明。建礼門院(平清盛の娘・徳子)女房・右京大夫との説があるが、その説に従うと成立は鎌倉時代か。
『建礼門院右京大夫集』と物語の表現の共通性、物語に見られる火事の状況・小野里の秋景色・手紙をすき返し経供養にする場面などは右京大夫自身が実際に体験していることであり、だからこそ情景豊かに描けたのではないかと思われる。
また、平重盛の子・資盛と恋仲だったこともあり、資盛の死後、彼の菩提を弔っていた時期に本物語を書いたとすると、鎌倉時代前期成立が考えられる。浮舟と薫の関係を創作することにより、資盛との懐かしい恋愛の記憶を物語に重ね、自分自身の心の中で昇華させようと試みたのではないか。
題名は、浮舟と再会した薫が別れ際に詠んだ、
『思ひやれ山路の露のそぼちきてまたわけかへるあかつきの袖』
に基づいている。




源氏物語を書写する際、単なる写し間違い(誤字)や意図的な書き換え(私ならこう表現したいわ!変えちゃえww)など、さまざまな原因から異本となって分かれて行くものですが、この物語は意図的な書き換えなんかじゃ物足りず、宇治十帖のその後を二次創作しちゃったという、平安末期の源氏オタク腐女子才女の書いたお話です。源氏が好きで好きでたまらなくて、何度も書写すれば、
「これは美しく装丁したから保存用に。こっちは酷使用ね。そうだ、アイデア浮かんだから私も何かつくれるかも」
みたいに、エスカレートしていくのはごく自然な流れ。
こういった二次創作チャレンジャーが当時は少なからずと思われます。いえ、ぜひ居て欲しいです。二次創作の腕ばかりを競った『朧月夜スピンオフ決定戦』や『頭中将×夕顔を幸せにしてあげよう五番勝負!』みたいな物語合わせがあって、そんなミニ創作集がどっかの蔵に残っていたらなあ、と切に思います。
この物語の作者は、
@とにかく浮舟と薫を再会させたかった
A浮舟と実母も涙の再会させたかった
に焦点をあてて物語を進行させています。山里の秋景色の描写も美しく、流麗な文章は読者の眼も心も癒されそう。哀愁漂わせ穏やかに進行するストーリーは、作者の落ち着いた人柄を想像させます。当サイトの管理人の書くドタバタ意訳より、優美で柔らかな文体の原文をぜひ堪能していただきたいです。
宇治十帖物語で、当時の読者の誰もが望んだと思われる@とA。
他にも匂宮の即位とか、もし浮舟が匂宮を選んでいたらとか…そんな二次創作を書いた宮廷女房たちが居たかもと想像をめぐらすのはとても楽しいです。
現代人としては、自我を出せず他人にされるがままに生きてきた浮舟が、一度仮死状態になって蘇生したあと、自分の足でおそるおそる、けどしっかりと大地を踏みしめる気持ちで人生を歩んで行く…そんな話も読みたいです。が、当時の読者層にはそんな需要がなかったのでしょう。強い意志を見せる浮舟は居らず、相変わらず世間体ばかりを気にする偽善者・薫も健在です。
夢浮橋巻ではいろいろな問題を含んだまま話が終わりますが、この『山路の露』でも、特に何が解決したとか進展したとかいうこともなく終了してしまいます。それは作者が物語をうまく回せなかったのではなく、
「誰の、どんな還俗の勧めにも首を縦にふらない浮舟の姿だけは描きたい。それが私(=作者)なりの夢浮橋巻の答え」
ということを言いたかったんじゃないかと思います。




■ 登場人物 ■


入道の姫君 … 浮舟
大将の君  … 薫
女君    … 主上の皇女の女二の宮。薫の正室
横川僧都  … 比叡山の高僧。死にかけていた浮舟を助けた
庵主    … 小野の里の庵の尼君。横川僧都の妹。
匂宮    … 主上と明石中宮の第三皇子。源氏の孫宮
宮の上   … 宇治の故八の宮の姫・中の君
大君    … 中の君の亡き姉君。薫の熱愛した人
小君    … 浮舟の異父弟。現在は薫の召使い
浮舟の母  … 常陸守の北の方。小君の母親でもある
右近    … 浮舟の乳母子
侍従    … 浮舟付き女房




  





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